top of page
松山.JPG

「本物」「実物」と「五感」を大切にし、子どもの「創造力」を育む美術教育

 

                        甲賀市立甲南第一小学校 校長 松山 辰也

 

 昨年度に続き、本研究会の会長を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。本研究会が73年間にわたりになってきた滋賀県の美術教育の推進という重要な役割と今日まで滋賀の美術教育に携わってこられた先達の先生方の思いを考えると、改めてその重責に身の引き締まる思いです。学校現場に寄り添いながら゛粉骨砕身゛の覚悟で会長という大役に臨み、精一杯努めて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本会の大きな事業として、毎年「滋賀県美術教育研究大会」と「滋賀県教育美術展」の二つを開催しています。
 第72回研究大会(栗東大会)では、「子どもも先生も楽しむ『学びの場』の創造~心広げて 想い深めて~」を大会テーマに、多くの先生方が参加され、午前は基調提案・実践研究協議、午後からは、神戸常盤大学教育学部こども教育学科 山田 秀江 教授による講演会がもたれ、貴重なご講話をいただくことができました。一同に会して大会を開催することができ、栗東市のご提案をもとに、滋賀の造形学習や表現活動、指導支援のあり方等につい議論を深めることができました。
 第70回滋賀県教育美術展では、滋賀の子どもたちの表現の「多様性」や滋賀の美術教育の「特徴」を、また多くの県民の方に発信することができることができました。その平面審査会では、県内より1万点を超える作品の応募をいただきました。当日には県内から100名を超える多くの先生方にご参加いただき、子どもたちの表現の中から見えてくる「工夫」「こだわり」や表現過程での「思い」「学び」、子どもたちのニーズに応じた指導者の「支援」のあり方や効果的な「技法」の活用法等、教育的観点に基づく審査会を実施しました。子どもたちの作品の見方やこれからの指導につながる充実した研修の場とすることができました。
 また、本年度には、本研究会主催の「第76回全国美術教育研究大会 滋賀大会」が草津市を会場に開催されます。大会テーマ「びわこto いきる」のもと、子どもも先生も楽しくなる造形学習について、造形における地域の特性や造形表現の過程を大切にした研究を進め、滋賀の美術教育の取組を全国の場で発信していきたいと思います。今年度の美術教育研究大会、教育美術展の開催と併せまして、より一層のご協力とご支援をよろしくお願いいたします。
 さて、近年のSNSの普及に伴い、だれでも必要な情報を簡単に入手でき、利用できる時代となりました。と同時に、急速にAI(人口知能)も進歩し、AIが、入力した条件で絵を描いたり、文を作成したりすることができるようになりました。アプリを使ってその利用もできるようになり、私たちの身近なものになってきました。また、学校現場では一人一台の端末が導入され、他のICT機器の活用と併せて、子どもたちの学びを支える中心となっています。操作も容易で面倒な作業も少なくなり、より効率よくスムーズに学習を進めることができるようになりました。本当に便利な時代となりましたが、私たちは周りの情報やAI・ICT機器に頼りすぎるようになって、自ら思考したり表現したりすることに消極的になり、その個性や力を発揮しなくなったり、或いはできなくなったりしてきているのではないでしょうか。
 そんな便利な時代だからこそ、美術教育の持つ意義を今一度しっかり考える必要があると考えます。すなわち、「五感」をいっぱいに使っての活動や表現を大切にする、「アナログ」な活動や表現、「本物」や「実物」を大切にする美術教育こそが、子どもたちの思考力や表現力を高め、創造力を育むために欠かすことのできない重要な教育であること再認識しなければならないと思います。そして、私たち美術教育に関わる者は゛不易流行゛を旨としながら、滋賀の子どもたちがその個性(自分の色・形・イメージ・表現方法)や持てる力、自らの「五感」を思う存分発揮できる「学びの場」をつくり出すことに、より積極的に取り組んでいく必要があると考えています。
 そんな思いを大切にしつつ、微力ではありますが、今後も本研究会がより多くの先生方の研修や学びの場となり、滋賀の美術教育の振興につながっていくよう力を尽くしていきたいと思います。

bottom of page